彼氏人形(ホラー)
こんな事になるなら、この前もう少し藤井さんを問い詰めておけばよかったんだ。


後悔が真っ黒な渦となって心の中に充満していく。


今さらここに突っ立ってあがいていたって、どうしようもない。


「有里、藤井さんの電話番号知らないよね?」


そう聞くと、有里はポケットにしまってあった携帯電話を取り出した。


その番号を見せてもらうと、名刺に書いてある番号と同じものだった。


少しだけ関わりを持って金銭のやり取りをするだけの高校生に、本当の電話番号など教えていないようだ。


念のために有里がその番号に電話をかけてみたが、当然繋がらなかった。


「まだ報酬も貰ってないのに」


有里が小さく呟く。


そんなの、友達を売ろうとしたんだから自業自得だ。


そう思うが、ここで有里と無意味な喧嘩をするつもりはない。
< 158 / 304 >

この作品をシェア

pagetop