彼氏人形(ホラー)
「今日学校はどうだった?」


「うん。楽しかったよ」


「陽子はなんの科目が得意なんだっけ?」


「う~ん……好きなのは数学だよ。でも得意ってほどじゃないけどね」


そう返事をして微笑む。


その間も、あたしは蒼太の表情を何度も盗み見し、あの冷たい顔になっていないかどうかと怯えていた。


「そっか、数学かぁ」


「う、うん」


頷き、沈黙が下りてくる。


どうしよう、なにか会話を続けたほうがいいのかな?


それとも、蒼太はこういう沈黙お望んでいるのだろうか?


わからなくて、あたしはせわしなく部屋の中を見回す。


すると、蒼太が突然あたしの肩に手を回してきたのだ。


そのままグッと引き寄せられる。


「そ、蒼太?」


恐怖で心臓がギュッと痛む。


しかし、蒼太はあたしに暴力をふるうつもりではなかったみたいだ。


回された手は優しくあたしの肩を抱き、ジッと動きを止めている。


「陽子、いい香り……」


「へ!?」


「シャンプーかな? 甘い香りがする」
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