彼氏人形(ホラー)
「どうぞ」


「あ、ありがとうございます」


あたしと実紗はお茶を受け取り、1口飲む。


お茶の種類や良し悪しなんてわからないけれど、普段家で飲んでいるよりも数倍おいしい味がした。


「妹さんは依子さんっていうんですね」


実紗がもう1度写真へ視線を移して言った。


「そうよ。半年ほど前に亡くなったの」


恭子さんの言葉になんと返事をしていいかわからなくなって、部屋の中に沈黙が流れた。


しかしその沈黙を破ったのは、恭子さんの笑顔だった。


「いいのよ、聞きたいことは遠慮せずに聞いて? あたしも、依子が死んだことについては納得ができていないのよ」


笑顔を浮かべたまま、恭子さんはそう言った。


「あの……亡くなった理由が納得できないんですか・」


「えぇ。そうよ」


「それは、どうしてですか?」


あたしがそう聞くと、恭子さんは表情1つ変えず、こう言った。


「依子の死体はね、狭い水路に無理やりねじ込まれるような状態で発見されたの。


全身に青あざができていて、だけど誰の指紋も検出されなかった」


淡々と話す恭子さん。


あたしの方が思わず眉間にシワをよせて、その話から目をそむけそうになる。
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