彼氏人形(ホラー)
どうやって家族にバレないようにしていたのかわからないけれど、これだけ大きな家なら十分に【彼氏人形】を隠しておくスペースはありそうだ。


1か月2か月と生活が続くにつれて、依子さんが載せているイラストはまた白黒のものが目立ってきた。


文面も暗く落ち込むようなものが多くなり、痛い痛いと文字連ねている時もある。


「この時、依子さんは【彼氏人形】から暴力を受けていたと思います」


「そんな……あたし、全然気が付かなかった……」


恭子さんが両手で口をおおい、目に涙を浮かべる。


身内の変化に気が付かず、初めて知った事実があまりにも衝撃的すぎたのだろう。


さっきから指先が小刻みに震えているのがわかった。


「依子さん、それでも【彼氏人形】を捨てたりスイッチを切ろうとはしなかったんですね」


あたしはブログに視線を戻して、そう呟いた。


暴力に耐える様子はうかがえても、相手を責めるような文章はまだ出てこない。


亡くなった明さんそっくりに作ったためか、随分と我慢していたみたいだ。


更に読み進めていくと、依子さんは自分が衰弱していく様子を書くようになっていた。
< 227 / 304 >

この作品をシェア

pagetop