彼氏人形(ホラー)
実紗の事ばかりを気にしていたせいで、蒼太を怒らせてしまったのだ。


「ご、ごめんね蒼太。ちょっと今日は疲れていて……」


「疲れていたら俺の話を聞けないってこと?」


「それは……」


あたしは口を閉じた。


肯定しても否定しても、きっと蒼太は許してくれない。


口の中の鉄の味が気持ち悪くてうがいをしたかったが、徐々に距離と縮めてくる蒼太にあたしの味覚はなくなった。


「ねぇ陽子。俺は昼間1人ぼっちなんだ。陽子が帰ってきたら色々話がしたい。その気持ちを理解してくれる?」


「う……うん……ごめんね、蒼太」


「陽子、謝るだけじゃわかんないよ?」


そう言い、蒼太はあたしの髪をわしづかみにした。


痛みに顔をゆがめる。
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