彼氏人形(ホラー)
パン屋さんの匂いがツンッと鼻に付き、食欲の失せた胃をギリギリと締め付ける。
「おいしそうな匂いだね」
と言って立ち止まりそうになる実紗をせかし、あたしは裏路地へとぬけた。
そこから【ドールハウス】まではあっという間だった。
昨日は少し迷ったから時間がかかったけれど、今日は路地へ入った瞬間その看板を見つけることができた。
途端に実紗が走りだす。
「ちょっと、待ってよ!!」
慌てて実紗を追いかけようとして、足が絡まる。
こける寸前の所でバランスを戻し、あたしは実紗を見た。
実紗はあたしのことなんて忘れてしまっているように、お店の中へと吸い込まれていった。
「全くもう……」
ブツブツと文句を言いながらも、このまま1人帰ってしまおうかという考えがよぎった。
後ろを振り向いて、商店街を抜け、自宅への道を走って行こうかと。
しかし、あたしは重たい足を【ドールハウス】へ向けて動かし始めた。
それは自分の理想的な異性を少しだけ見てみたいという願望と、怖いもの見たさが混じった結果だった。
「おいしそうな匂いだね」
と言って立ち止まりそうになる実紗をせかし、あたしは裏路地へとぬけた。
そこから【ドールハウス】まではあっという間だった。
昨日は少し迷ったから時間がかかったけれど、今日は路地へ入った瞬間その看板を見つけることができた。
途端に実紗が走りだす。
「ちょっと、待ってよ!!」
慌てて実紗を追いかけようとして、足が絡まる。
こける寸前の所でバランスを戻し、あたしは実紗を見た。
実紗はあたしのことなんて忘れてしまっているように、お店の中へと吸い込まれていった。
「全くもう……」
ブツブツと文句を言いながらも、このまま1人帰ってしまおうかという考えがよぎった。
後ろを振り向いて、商店街を抜け、自宅への道を走って行こうかと。
しかし、あたしは重たい足を【ドールハウス】へ向けて動かし始めた。
それは自分の理想的な異性を少しだけ見てみたいという願望と、怖いもの見たさが混じった結果だった。