彼氏人形（ホラー）
あたしにとって、実紗のお葬式はただ義務的なものでしかなかった。


未だに頭の中は真っ白で、何かを深く考えることができない。


食事や睡眠もほとんど取らず、お風呂へ入ることや部屋を綺麗に保つことも、今のあたしには困難な仕事だった。


あたしは実紗の両親にお辞儀をして、自分の座っていた場所へと移動する。


その最中、どこからかヒソヒソと話し声が聞こえてきた。


「ほら、あの子よ」


「あぁ。実紗ちゃんが亡くなった時一緒にいたっていう？」


「そうそう。警察の事情聴取でわけのわからないことをうわごとのように繰り返してたっていう子」


それがあたしのことだと気が付くのに、かなりの時間がかかった。


警察に行ったことも、【彼氏人形】についてのすべてを話したことも、あたしの記憶からはすっかり抜け落ちてしまっていたため、椅子に座ってしばらく経ってから、あぁ、そうだっけ。


と、記憶が鮮明に思い出されていった。
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