彼氏人形(ホラー)
ならばと思い、あたしは蒼太が【彼氏人形】である決定的な証拠を見せようと思った。


そう、足首にあるスイッチだ。


あのスイッチを見れば、嫌でも【彼氏人形】の存在を信じるしかないと思った。


警察官が家から帰ってしまう寸前、あたしは蒼太のズボンのすそを捲り上げた。


警察官が何をしているのかと言う顔で、あたしを見る。


「これを見てください!!」


必死になってそう言い蒼太の靴下へ右手をかけたとき……。


蒼太があたしの腕を掴んで、それを止めたのだ。


「なんでもありません。くだらないことに時間をかけてすみません。陽子にはよく言って聞かせますから」


蒼太は困ったような笑顔を浮かべてそう言い、警察官を返してしまったのだ。


あたしは蒼太に腕を掴まれたまま、ドアを閉じられる冷たい音を聞いていた。


そしてジリジリと冷や汗が伝って流れていく。


「そう……た……」


かすれた声しか出なかった。


意識が薄れて、悲鳴なんてあげられなかった。


警察官を引き止めることなんて、できなかった。
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