彼氏人形(ホラー)
そう思って地図を見ていると、住所のすぐ近くに電車が通っていることがわかった。


これだ……!!


あたしはすぐに自室へと戻り、着替えを始めた。


すぐに出かけられる準備をする。


「陽子、出かけるの?」


部屋の隅で目を閉じていた蒼太が、いつの間にか目を覚ましてこちらを見ていた。


一瞬、蒼太の声にドキッとして身をすくめる。


しかし……。


「そうよ……一緒に行く?」



と、あたしは提案をした。


「俺も一緒に行っていいのかい?」


蒼太の表情が明るくなる。


デートなんて全然行っていなくて蒼太はずっと家の中にいたから、本当にうれしそうだ。


その顔を見ると、少しだけ胸が痛んだ。


あたしはこれから、この笑顔ごと蒼太を消そうとしているんだ。


だけど、その気持ちに迷いはなかった。


人間が人形に負けるわけにはいかない。

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