彼氏人形(ホラー)
☆☆☆

しばらくして玄関から出てきたのは、白髪交じりの60代くらいの女性だった。


その顔は藤井さんによく似ていて、あたしは思わずハッと息を飲んだ。


「どなたですか?」


玄関から出てきても何も言わないあたしに、けげんそうな表情を浮かべる女性。


あたしは我に返り「あ、すみません。娘さん、いらっしゃいますか?」と、訊ねた。


名刺には藤井希子と書いてあったが、それが本名かどうかわからないため、あたしはそう言った。


不振がって追い返されるかもしれないと思ったとき、家の中からもう1人が姿を現した。


それはあたしがずっと探していた藤井さん本人で、藤井さんはあたしと蒼太を見て唖然とした顔を浮かべていた。


「ここにいたんですね」


あたしは強い口調でそう言った。


「よくここがわかったのね……」


自分の母親の手前荒い言葉は使いたくないのか、藤井さんは柔らかな口調でそう言った。


「話があります」


「……わかったわ。そこの公園で話ましょう」


藤井さんはそう言い、母親に「すぐ帰るわ」と伝えて、家を出た。
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