彼氏人形(ホラー)
あたしは藤井さんの顔と足首のスイッチを交互に見る。


藤井さんは笑顔を浮かべたまま、口を開いた。


「あたしは【彼女人形】として数年前とある男子学生に購入されたの。


それからあたしは人形として作られた記憶の中で生きてきたわ。


でもね、数日もすれば徐々に思い出しきたのよ。


あたしが本物の人間だったときの記憶をね」


「本物の……人間……?」


背筋がゾクリと寒くなる。


今すぐここから逃げ出したい。


「えぇ。あたしの本名は赤上紀子(アカカミ ノリコ)。


記憶が戻ってくると同時に、自分には人間離れした力があることに気が付いたわ。


少しでも不快なことがあれば相手を痛めつけ、自分の言いなりにした。


そしてある日、ついにあたしは購入者を殺してしまったの。


最初はこの力を恐ろしいと感じた。でも、そんな気持ちはあっという間に消えて
なくなったのよ」



藤井さんは、自分の手のひらを見つめてほほ笑んだ。


「【彼氏人形】や【彼女人形】はね、購入者を殺害してその魂をもらって、この世に蘇ることができるのよ。


それに気が付いたのはあたしだけじゃない。


すべての人形たちが気が付き、購入者を殺害することを最終目標とするようになっているのよ」


ニヤリと笑い、そう言う藤井さん。
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