彼氏人形（ホラー）
あたしは思わずその場に尻餅をついていた。


「うそ……」


「うそじゃないわ。


その子だって、１度は死んだ本物の人間なのよ。


そして彼の死を忘れられない誰かが、彼を人形として販売し、そして再生することを望んだ。


だからあの店に並んでいたのよ」


【彼氏人形】を販売している裏の組織は、情報を売買しているだけの組じゃなかったんだ！！


それよりももっと怖い、死んだ人間を人形として蘇らせる組織が存在していたのだ。


蘇った人形は記憶を取り戻し、帰る場所を思い出し、購入者の命を奪って自分のものにし、帰って行く……。


赤上さんにとっては、母親のいる実家が帰る場所だったんだ。


あたしはその事実を突き付けられて、何も考えられなくなっていた。


目の前でニヤニヤと笑う赤上さんを、唖然としたまま見つめるしかできない。


そんな時だった。


不意に蒼太があたしの隣にしゃがみ込んできたのだ。


「陽子、俺たちの邪魔をする人って、この人のこと？」


そして、蒼太はあたしにそう聞いて来たのだ。


あたしは一瞬なんのことだか理解できなかった。


しかし、すぐに蒼太の言っていることを理解した。


そうだ、あたしは今日蒼太にあたしたちの邪魔をする人間がいると伝えて連れ出したんだった。


蒼太はまだそれを信じている。
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