彼氏人形(ホラー)
☆☆☆

それから数十分後。


金属がぶつかり合うような音が途切れ、あたしはそっと目を開けた。


目の前には肩で息をしている蒼太と、その下で倒れて動かなくなっている赤上さんの姿があった。


「陽子。邪魔者は消したよ」


蒼太がそう言い、微笑みを浮かべて振り返る。


あたしはそれに返事をせずに、そっと赤上さんに近づいた。


彼女の皮膚はところどころ剥がれおちて、銀色の金属がのぞいていた。


金属ののぞいている右肩にそっと触れてみると、それはカランッと音を立てて体から落ちてしまった。


「陽子、どうしたの?」


何も言わないあたしに、蒼太が不思議そうな表情を浮かべている。


「……なんでもないわ」


そう言い、あたしは立ちあがる。


本当は蒼太に赤上さんを脅してもらい、【彼氏人形】を止める方法を聞きだす予定だった。


でも、予想外の展開にあたしは動くことができなかったのだ。


「蒼太。まだやることがあるわ。付いてきて」


赤上さんから聞き出せなくても大丈夫だ。
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