一番欲しいプレゼント【短編】
 あたしは彼を睨む。

 今の心の動揺を彼に見透かされたくなかったから。

 虚勢を張った。

 そんなあたしを見て、寛は困ったように微笑んだ。

「今日、一緒に帰らないか?」

 この男はどんな神経をしているのだろうか。バレンタインのお返しさえくれない程度のあたしに一緒に帰ろうと言う。

 多分何も考えていないのだろう。

「気が向いたらね」

 あたしはそう冷たく言うと、自分の席に戻った。
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