あの日あの時...あの場所で






「キ..キング?」

美夜は顔を強張らせながらも、キングをなだめようと手を伸ばしてキングの腕を掴もうとする。


だけど、もうそれは届かない。


「触んな」

キングの鋭い一瞥と声に、触れることを阻まれた。


「...ど、どうして」

小さく囁くように漏らした美夜の声はもうキングに届かない。


悔しげに顔を歪めればいい。

自分がキングに一番近い女だと勘違いして、領域を踏み外した罰だ。




「帰るぞ、圭吾」

苛立ちを視線に宿したまま俺に一瞥とくれると歩き出した。


「OKキング、帰ろう」

ゆるりと口角を上げてキングの隣へと駆け寄る。


美夜はその場に取り残されて呆然としながらも必死に声を出した。

「ま、待ってキング」

ほんと、懲りない女だよね?


ここまで拒絶されてるのに。


ほら、お前の声はもうキングに届かないよ。



俺はたっぷりの笑みを称えて振り返る。


「君はもう用なしだよ。今後、キングに近づくことは許さない」

あぁ、ずっと言いたかった言葉がやっと言えた。


「...貴方にそんな権限なんて..」

ないと勢いよく言おうとした美夜に、


「俺はキングの側近だからね。キングが望まない物は排除する。君がその対象になることを何度望んだか...フフフやっとだね」

俺は被せるように言葉を告げた。



「..っ..」

下唇を噛み締めて俺を睨み付ける美夜。


「自分だけが特別だなんて思い上がるからだよ。一夜限りの女よりは少しだけ情はあったかも知れないが、キングの特別なんかじゃ無かったんだよ。その証拠に切られるのは一瞬だったろ?」

「......」

俺に図星を突かれた美夜は顔を歪めるだけで、もうなにも言い返しては来なかった。


「じゃあ、永遠にサヨウナラ」

俺はそう言うと背を向けた。


おっと、キングは随分と先に進んじゃってるじゃん。


俺は駆け足でキングを追いかけた。


背後から美夜の泣き声が聞こえた気がした。





さぁ、楽しくなりそうだ。


狼王のお姫様の情報をかき集めようか?


俺はキングに幸せになって欲しいんだよね。


相手が狼王のお姫様ってのは問題だけど。


キングが欲しいと言うのなら、力を尽くそう。


全てを諦めていたキングの瞳に、光が宿ったんだから、それを逃したりしない。



「キング、腹ごなしして帰ろ」

普通にキングに声をかける。


「...チッ」

舌打ちしつつも嫌がったりはしない。


そんなキングが好きだよ。


だから、協力は惜しまないからね?


俺は小さくほくそ笑んだ。





圭吾side.end


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