あの日あの時...あの場所で





「フフフ...バカだな私今ごろ気が付いた」

咲留やちぃ君が必死に豪の側を離れるなって言ってた訳。


あの場所は西と南の中立地域。

こんな風に偶然にも出会ってしまうかも知れなかったからだ。


一人で再会なんてしていたら...ゾッとする。

あの時は皆がいてくれたから、自分を保つことが出来たと思う。


柊がキングだと言う事実に打ちのめされたかも知れない。


極悪で非情で、女を遊び道具の様に抱く。

4校で一番最悪な男。

柊はどうしてそんな風になっちゃったの?


そりゃ、昔から愛想の良い方じゃ無かったけど、優しく笑ってたじゃない。


彼を変えたのは何なのだろうか。


「今さら私がそんな事思っても仕方ないか...」

だって、彼は私から去った人だもんね。


別れも言わずに私の前から居なくなった。


あ...それは正しくないかな?

私が彼を置いてアメリカに行った、そして彼は愛想を尽かして居なくなった。


どちらにせよ、私には柊を責める資格も咎める資格も無いってことね。


人間...悲しすぎると涙は出ないのかも。




トントントン


ドアがノックされる。


「...瑠樹、起きてるか?」

遠慮がちに掛けられた咲留の声。


きっと今日の事だ。

豪から事情を聞いたに決まってる。


逃げてばかりも居られないよね。

心配してくれてる咲留を無視なんて出来ないし。


「...うん、起きてる」

私の声を聞いてドアを開けて顔を隙間から覗かせた咲留は、私の顔を見てほっとした。

相当心配かけてたんだと分かる。


「腹減らねぇ?今日は有名中華をテイクアウトしてきたんだ」

フフフ...咲留なりの優しさだよね。

晩御飯の話題から振ってくれるなんて。


「直ぐ行く」

そう声を掛けてベッドから降りた。


「分かった、先行くな」

咲留はドアを開けたままリビングへと戻っていく。

咲留と向き合おう。


私はきっと聞かなきゃいけない事がある。







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