あの日あの時...あの場所で
リビングに入ると凄く良い香りがして、お腹がグウゥと鳴った。
悩んでいてもお腹は減るみたい。
私は中々神経が図太いらしい。
「良い匂い、美味しそうね」
リビングのテーブルに並べられてるテイクアウトの料理に目を向けた。
「だろ?ここの旨いんだぜ」
カップに入れた飲み物を両手にキッチンからやって来る咲留。
「そうなんだ。色々あるね」
テーブルに並んだ料理を見ながら椅子に座った。
「おう、これかフカヒレで、これが回鍋肉、これが八宝菜、で伊勢海老のエビチリ、干しアワビのステーキ、それと天津飯。はい、オレンジジュースで良いか?」
料理の説明をすると、手に持っていたグラスを差し出してくれた。
「ありがと」
お礼を言ってグラスを受けとる。
咲留は自分用のグラスをテーブルに置くと席についた。
「温かいうちに食おうぜ」
「そうね、いただきます」
手を合わせてから、箸を手に取った。
どれから食べようかな。
取り皿を手に食べたい料理を取り入れる。
「腹一杯言えよ」
と言われ、
「うん、食べる」
と微笑んだ。
穏やかに咲留斗の夕飯が始める。
不意に向けた視線、リビングの時計はすでに21時を回っていて。
かなり遅い夕食なんだと気付いた。
咲留はきっと時間潰しをしてきてくれたんだと思う。
私に一人の時間が必要だと感じて。
ほんとね?良くできたお兄ちゃんだ。
「美味しいね」
とろとろのフカヒレは絶品だった。
「ああ。お、これも食え美味いぞ」
私の皿に入れてくれたのはアワビのステーキ。
それを取り口に運び込む。
ん、美味しい。
柔らかく煮込まれててしっかりと味もついてるし。
「美味しいぃ」
頬に手を当てて微笑んだ。
美味しいものは視線に人を笑顔にするんだね。
「笑ってくれて良かった」
安心した様に微笑まれたし。
「私も笑うわよ」
失礼ね、なんて言い返しておく。