あの日あの時...あの場所で







「瑠樹は小さくても良く食うな。買ってきたかいがある」

咲留は嬉しそうにグラスを掴む。


「だって美味しいもん」

天津飯を掬いながら咲留を見る。


「そりゃ良かった」

グラスの中身を飲み干すと席を立った。


キッチンへと入っていった咲留は、サーバーからビールを注ぐ


咲留がここに来た日に設置されたそれ。

自宅用の小さなやつだけど、泡の細かさが良いらしい。



カウンター越しにビールを注ぐ咲留の後ろ姿をぼんやりと眺めてた。


「どうした?そんなに見て。お前も飲みてぇの?」

奴は後ろに目があるのか。

ビックリするんだけど。


「ううん、要らないし。って見えてんの?」

疑問に思ったことを聞いてみると、


「熱烈な視線を感じた」

と言われた。


いやいや、熱烈では無かったよ。

どんな勘違いよ。



「熱烈とか無いけどね」

ここは否定しとく。

咲留ってば、直ぐに勘違いするし。



「んだよ。送ってくれてもいいじゃん、熱烈な視線」

グラス片手に戻ってきた咲留は、なぜか拗ねてて。


いやいや、なに拗ねてんのよ!



「気味悪い」

私達、兄妹だからね。


間違っても恋人じゃないし。


「あぁ、瑠樹はツンデレだなぁ」

「いや、いつデレた」

「良いの良いの、お兄ちゃんには分かるんだ」

「...気持ち悪い」

本当、意味分かんないから。


「さ、今日は食事を再開しよう」

気持ち悪いって言葉スルーしたよね。


咲留は、無視のスキルを覚えたらしい。


ふっ...中々やるね。










和やかに進んだ食事。

減ってたお腹はしっかりと満たされた。

テイクアウトだから後片付けも凄く楽だったし、今は紅茶を飲みながら食後のデザートを食してる。


デザートはフルーツゼリー、しかも人気店の店の個数限定商品だったりする。


どうやって入手したのかは、あえて聞かなかった。


咲留的裏技を使ったのだろうからね。

聞かぬが仏って事もある。






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