あの日あの時...あの場所で
フルーツゼリーはとても美味しくて、実は二個も食べちゃった。
しかも、こんな時間に.....。
太るな、確実に。
身長が低い分、体重には気を付けないといけないんだけどね。
ま、今日だけは許してもらおう。
「瑠樹...」
湯気の立つカップを手に持ったままこちらを見た咲留。
対面に座ってるから、視線を避けようもない。
ま、元々、避けるつもりもないけど。
「ん?何?」
スプーンを銜えたまま咲留を見る。
「今日は...会ったんだろ?」
誰だか聞かなくても分かる。
「...あ、うん。驚いた」
手に持っていたスプーンとゼリーのカップをテーブルに置くと、両手を膝に乗せた。
「ごめんな?俺が最初から言っておけば良かったな」
咲留は悪くないのに、そんな悲しそうな顔しないでよ。
「ううん、良いの」
偶然の出会いは誰にも止められなかった。
「俺の知ってる事を聞きたいか?」
こうやっていつも私に選択肢をくれるんだね。
「...うん、聞く」
聞かなきゃダメな気がするから。
膝に乗せた手をギュッと握った。
「分かった話す...あいつの事はずっと前から知ってた」
ゆっくりと話し出した咲留は困ったように眉を下げたままで。
「...あ、うん」
「瑠樹がアメリカに行って数ヵ月経った頃に、あいつは母親と一緒に西に移り住んだ。1度だけあいつから連絡が来た。今後瑠樹とは関われないと...」
そっか...咲留には話してたんだね。
「...だから、連絡取れなくなったんだね」
普通に笑おうとするのに、顔の神経が上手く反応してくれないよ。
「...理由を聞いても言わなかった。そのうち、俺とも連絡を取らなくなって、あいつの悪名が聞こえてきた」
柊の悪名...ズキンズキンと胸の奥が痛む。
「...うん」
咲留は私の様子を伺いながらも、話を続ける。
「冷酷で女を食い散らかし、その上死に急ぐ戦い方をするって有名になった。俺は信じられなく一度だけ西へとあいつに会いに行った。だけど、そこにはもう俺の知るあいつは居なくて。引っ越して数ヵ月で別人に変わってやがった」
咲留は悔しそうに奥歯を噛み締めた。
咲留も柊の事は可愛がってたもんね。
別人...確かに今日出会った柊は違う人みたいだった。
全てを諦めた様な冷たい瞳をしていた。
そして、妖艶さを身に纏って冷たい色をしてた気がする。