あの日あの時...あの場所で
「瑠樹、何があっても豪の側を離れんな?あいつはお前を...お前だけを見て守ってくれる男だから」
そう言った咲留の瞳は力強くて。
「...フフフ、そうだけどさ。あんまり豪も私にばっかり構ってたら彼女出来なくなっちゃうよ」
それはそれで、豪の妨げになるのは嫌なんだよね。
豪は凄く良い奴だもん。
「...はぁ....お前が天然だと初めて知った。こりゃ豪も苦労する」
何よ?その憐れみの視線は。
しかも額を押さえて溜め息ついてるし。
「豪の苦労って何よ?」
問い詰めようとしたら、
「俺からは言えねぇわ。あ、風呂入ってくる」
体よく逃げられた。
く、くそぉ~なんなのよ、咲留の馬鹿。
咲留の消えてレストルームのドアを睨み付けた。
「...はぁ、少しスッキリした」
そう言葉にしてカップの中の紅茶を飲み干した。
突然の再会で戸惑ってしまったけど、こうやって口にして咲留の話を聞いて、少し落ち着いた。
まだ、頭の中では消化できてないけど。
これはきっと時間が解決してくれるはず。
そうやって、この三年過ごしてきた。
柊には既に相手も居るし、私とは関わる事はないでしょ。
西とあのスーパーにさえ行かなきゃ大丈夫。
全てを封印すれば問題ない。
落ち着けば良いだけ、私だけ取り乱しても自分が情けなくなるだけ。
「よし、片付けよう」
テーブルの上を片付け出す。
何もせずにぼんやりしてたら、余計なことばっかり考えちゃうしね。
体を動かしておこう。
それすれば、自然と考えなくなる。
チャラララ~
不意に聞こえた小さな着信音。
耳を澄ませて聞いてみると、聞き覚えのあるそれは間違いなく私のスマホだ。
急いで部屋へと小走りする。
この着信音は一人しかいない。
青いタヌキが主人公の某アニメのサブキャラが歌う曲。
おれは....ガキ大将...
これは間違いなく豪からの電話。
先日、大翔が私のスマホを勝手に弄くってこの曲に変えた。
豪はまさにジャイ○ンだとか言いながら。
もちろん、豪からの制裁は受けてたけどね。
慌てて部屋のドアを開けて部屋の中に入ると、鞄に入れっぱなしのスマホを取り出した。