あの日あの時...あの場所で







「瑠樹、何があっても豪の側を離れんな?あいつはお前を...お前だけを見て守ってくれる男だから」

そう言った咲留の瞳は力強くて。


「...フフフ、そうだけどさ。あんまり豪も私にばっかり構ってたら彼女出来なくなっちゃうよ」

それはそれで、豪の妨げになるのは嫌なんだよね。

豪は凄く良い奴だもん。


「...はぁ....お前が天然だと初めて知った。こりゃ豪も苦労する」

何よ?その憐れみの視線は。


しかも額を押さえて溜め息ついてるし。


「豪の苦労って何よ?」

問い詰めようとしたら、

「俺からは言えねぇわ。あ、風呂入ってくる」

体よく逃げられた。


く、くそぉ~なんなのよ、咲留の馬鹿。



咲留の消えてレストルームのドアを睨み付けた。




「...はぁ、少しスッキリした」

そう言葉にしてカップの中の紅茶を飲み干した。


突然の再会で戸惑ってしまったけど、こうやって口にして咲留の話を聞いて、少し落ち着いた。


まだ、頭の中では消化できてないけど。


これはきっと時間が解決してくれるはず。

そうやって、この三年過ごしてきた。


柊には既に相手も居るし、私とは関わる事はないでしょ。


西とあのスーパーにさえ行かなきゃ大丈夫。


全てを封印すれば問題ない。


落ち着けば良いだけ、私だけ取り乱しても自分が情けなくなるだけ。



「よし、片付けよう」

テーブルの上を片付け出す。

何もせずにぼんやりしてたら、余計なことばっかり考えちゃうしね。


体を動かしておこう。

それすれば、自然と考えなくなる。




チャラララ~


不意に聞こえた小さな着信音。


耳を澄ませて聞いてみると、聞き覚えのあるそれは間違いなく私のスマホだ。

急いで部屋へと小走りする。


この着信音は一人しかいない。


青いタヌキが主人公の某アニメのサブキャラが歌う曲。


おれは....ガキ大将...


これは間違いなく豪からの電話。


先日、大翔が私のスマホを勝手に弄くってこの曲に変えた。


豪はまさにジャイ○ンだとか言いながら。


もちろん、豪からの制裁は受けてたけどね。



慌てて部屋のドアを開けて部屋の中に入ると、鞄に入れっぱなしのスマホを取り出した。








< 114 / 445 >

この作品をシェア

pagetop