あの日あの時...あの場所で






タップしようと思った瞬間に着信は鳴り止む。


あらら間に合わなかった。


かけ直そうと画面を見れば、着信とメール受信の表示が点灯していて。


急いで開いて見れば、どちらも無数に履歴が残ってた。


殆ど電話なんか掛けてこない豪の名前がずらりと並んでたことに、胸が熱くなった。


豪にも心配かけちゃったよね。


理由だって知らなかっただろうし。


豪の着信の隙間に、桃子、梅、大翔、夏樹の名前が入ってる。


「皆...ありがとう」

しっかりしなきゃね?


側に誰も居なかった三年前とは違う。


今の私には、こんなにも心配してくれる仲間が大勢居るんだ。

嬉しい。

本当に嬉しいよ、皆。

すきま風の吹いていた場所が埋まっていく気がする。


私はスマホを操作すると、桃子と梅にメールを作成した。

心配をかけた事へと謝罪と、元気が出たよと報告を送信する。



それから豪の番号を表示させたタップした。


プルルルル

数回の呼び出し音の後に電話は繋がる。



『瑠樹』

「電話に出て直ぐに名前呼ばれるとか怖いんですけど?」

『...大丈夫か?』

今の豪は冗談をスルーするらしい。


「大丈夫だし」

『ならいい。飯は食ったか?』

豪の背後がざわざわと騒がしい。


外に居るのかな?


「うん、食べたよ。高級中華料理」

と正直に答えたら、


『ああ"?』

と何故かキレた。



「いやいや咲留が買ってきたんだし、私悪くないからね」

しっかりと食べたけど、私のせいじゃないし。


『咲留さんて、お前の事になると金に色目つけねぇからな』

ちょっと、うちのお兄ちゃんをどこかの成金みたいに言わないでよ。

と思いつつも、本当の事なので何も言えない。


「合ってるから怖いし」

ニシシと笑った。


『時々あの人のシスコンぶりに引く』

豪の静かな声に本気だと知る。








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