あの日あの時...あの場所で
確かに、凄いシスコンぶりだとは思うので、反論しません。
『海、明日行くぞ』
えぇ?いきなりだね。
これが豪の気遣いだよね。
「本気?」
『嘘ついてどうすんだ?』
馬鹿じゃねぇのか?と言われてる気がする。
「決定事項ですか?」
と一応聞いてみる。
『当然。せっかく水着買ったんだ、海行くぞ』
「分かった。楽しみにしとく」
『一泊するからそのつもりで用意しとけ』
「...うん」
まさかのお泊まりですか。
『咲留さんにはもう許可は貰ってる』
やること早いね。
「了解」
『じゃあな。明日は朝の6時に迎えにいく』
「はやっ!」
『少し遠出するからな。今日は早く寝とけ』
「うん。豪ってお母さんみたい」
クスクス笑ったら、
『うぜぇ』
と怒られた。
豪の背後が騒がしくなる。
やっぱり外なのかな?
「豪、今外?」
『ああ、うるせぇか?』
「あ、ううん。室内の音じゃなかったから」
『大翔が明日の為にバナナボート欲しいとか言い出して、ホームセンターに来てる』
「フフフ...大翔っぽい」
『マジ面倒臭せぇ』
今ごろ、ほんとに嫌そうな顔してるんだろうね。
「何か面白そうな物が有ったら買ってきてね」
『分かった。(豪、早く来て)』
大翔の声が聞こえてくる。
しかもすっごい張り切ってるね。
『じゃ行くわ。あいつうるせぇ』
「分かった。じゃあね。おやすみ」
『ああ、おやすみ』
切れた通話。
豪、ありがとね。
ぶっきらぼうだけど、その中に優しさを秘めてる豪に、私は救われてるよ。
いつも、私を心配してくれてありがと。
もちろん、豪だけじゃない。
大翔も夏樹も、桃子も梅も楓も、そして咲留達も。
本当に心から感謝した。
私は強くなろう。
柊に会っただけで取り乱してる場合じゃないね。
それに...柊とだって、恋人とか彼氏とかそんなはっきりした関係でも無かったじゃない。
あの頃だって、きちんと言葉にしたことのない関係で。
それは今も変わらない。
なのに、私一人が動揺して馬鹿みたい。
柊は普通だったじゃん
彼女も居て、沢山のセフレが居て。
私はたまたま再会した昔馴染みってだけ。
通りすがりの人達と何ら変わりない存在。
「ハハハ...そう考えたら、本当に馬鹿みたいね?」
私だけが昔に囚われてたんだもん。