あの日あの時...あの場所で
惑う思い








一泊二日の海水浴旅行から帰ってきた次の日は、くしくも学期末テスト開始日だった。


試験勉強もせずに、遊び呆けてしまった王凛メンバーは、教室で悲鳴を上げたとかあげないとか。


豪と私のクラスで悲鳴を上げるメンバーは居なかったから、本当の所は知らない。


風紀の緩い王凛でも、テストは厳しかったりする。


普段好きなようにしていても、テストでは赤点を取ると補習があり、その補習の最終日のテストで合格しなければ、留年もありきらしい。


だから、皆、必死に勉強する。


私も豪も普段から成績が悪い方じゃないので、特に焦りはしなかった。



なんなくこなしたテスト。


皆は魔の五日間だと言っていたけど、それはあっという間に過ぎ去った。




テスト返却日の今日は、明日からテスト休みに入るとクラスの皆のテンションは上がってた。



そんな中、

「あかん、俺死んだ」

豪の机の前にしゃがみこんで机に突っ伏すのは大翔。


何でも、赤点が三つもあったらしい。


「知るか、自分の教室に帰れ」

豪はやっぱり冷たい。


「そんなぁ~冷たいわぁ」

いやいや、HRを抜け出して隣のクラスから来る必要ないでしょ?


さめざめと泣く振りをする大翔に冷たい視線を向ける私と豪。



「ほら、クラスへ帰りなさい」

眼鏡のフレームを押し上げてピシッと言い捨てたのは、夏樹。


「皆、狡いわ。俺だけやなんて」

悲観する大翔に、

「いや、それは大翔が勉強してないからでしょ?」

と机に頬杖をついたまま言ってみた。


海でもずっとナンパした女の子達と遊び回ってたしね。



「酷い...酷いわ」

女の子みたいな口調で走り去っていく大翔。


「なんだ、あの小芝居は...」

豪は大翔の背中を見て大きな溜め息をついた。



「ほんと、なんでしょうね?」

豪と同じ方向を見て同じように溜め息をつく夏樹。


そんな二人も、大翔を本気で見捨てたりはしないんだ。



「明日から差し入れを持ってきてあげようね?」

明日から一週間ある赤点の補習に、仕方がないなら差し入れしてあげよう。

フフフと笑った私に、

「面倒だな?」

と口角を片方上げた豪と、


「馬鹿ほど可愛いですからね」

とイジワルく笑った夏樹。


なんだかんだ言って、愛されてるぞ、大翔!









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