あの日あの時...あの場所で
「ねぇねぇ、テストも終わったし。駅前のカフェでお茶しない?瑠樹」
ニコニコ微笑みなからやって来たのは楓。
HRも終わって、帰り支度をしていた私は鞄から楓へと顔を向けた。
「カフェ?」
首を傾けて聞いた。
「そうなの。今日はケーキフェアをやってて食べ放題なんだって」
楓の後ろから顔を出してそう言ったのは桃子。
「この二人は甘い物に目がないのよ。」
と梅もやって来た。
ケーキかぁ、私も食べたいかも。
豪をチラリと見る。
言って良いかな?のご機嫌伺いだ。
海でのあの一件以来、豪との別行動はかなり制限されてる。
行き帰りはもちろん、近所での買い物も豪や夏樹達が居ないとダメになった。
だから、出来るだけ帰りの時間で買い物を済ませたりしてる。
いちいち、後になって来てもらうのは悪いからね。
もちろん、咲留やちぃ君達が居たら外出も問題ない。
ま、見張られてる訳じゃないので、夜になって出掛けようと思えば一人で出掛けたりも出来なくもない。
ただ...それをしないのは、豪達に余計な心配をかけたくないからで。
「行きたきゃいけ。その代わりカフェまでは護衛付きだ。少し離れてうちの連中が数人ついてく」
豪は私の言いたい事を分かってくれたみたい。
護衛付で許可が降りた。
「本当に行っていいの?」
「ああ。たまには女同士で話もあんだ」
おぉ~豪、よくわかってるじゃん。
「森岡君、分かってるじゃない」
フフフと梅が綺麗に笑う。
「...チッ..」
煩わしそうに梅を見た豪はそのまま私へと視線を向けた。
照れ隠しに舌打ちって...私まで笑いそうになったし。
「やった、瑠樹ちゃん行けるの!」
きゃーっとピョンピョン跳んで喜ぶ楓と、
「瑠樹と初めてのデートね?」
と私の腕に腕を絡めた桃子。
二人の嬉しそう顔を見て私も微笑んだ。
女友達とカフェでお茶なんて嬉しすぎる。
「じゃ、行きましょうか?大切なお姫様借りていくわね」
サラリと手で後ろへと長くて綺麗な髪を流した梅は、豪を一瞥した。
「...ああ」
素っ気ない返事をしてチラリと梅に視線を向けた後、すぐに私へと視線を戻した。