あの日あの時...あの場所で
「瑠樹、こっちおいで。変態が移るから」
再び咲留に縦抱きされる。
この変態の横に居るのよりマシなので、素直に咲留に抱きついた。
「うわぁ、咲留、ええなぁ。俺も抱っこしたいわ」
ほらおいでや、なんて手を伸ばしてくるんじゃないわよ。
「嫌やよ」
ふんっとそっぽを向く。
「うわっ、マジで堪らん」
頼むから、あからさまに股間を押さえるのはやめて欲しい。
「ダメだ、危険すぎるから向こうへ行こうな」
咲留は金髪変態に警戒心を剥き出しにして、離れたソファーへと歩き出す。
今度下ろされた場所は誰も座ってない三人掛けのソファー。
やっと、ほっと息を付く。
気持ち悪さはまだ残ってるけど、随分とマシにはなった。
咲留は私の隣に座って、変態やちぃ君を警戒中。
「はい、これどうぞ」
いつの間にか近くに来ていた健が差し出したのはオレンジジュース。
「あ...ありがとう」
喉が乾いてたので素直に受け取った。
「うわっやっぱり可愛い」
チャラ男はチャラ男だった。
隣に座ろうとするのは止めて欲しい。
「向こう行け、健」
もちろん、咲留は威嚇する。
「座るぐらい良いじゃんよ」
「無理」
一言で片付けた咲留は、シッシッと追っ払う仕草をする。
「ちぇっ~咲留のケチんぼ」
と言った健は
「うっせ!」
と靴の爪先で脛を蹴られた。
「ってぇ~!」
と叫んでしゃがみこんだ健。
御愁傷様。