あの日あの時...あの場所で
ここで自己紹介しないのも、流石に非常識だと思うので、
「瑠樹.ジェンキンス」
と名乗った。
「えっ?咲留と名前が違うんやな?」
遠慮なしにズカズカと踏み込んでくるのね?
ま、別に良いけどさ。
そんな気にしてないし。
「そうよ。うちのママはパパの愛人だったもの。名前が違って当然よ」
私があまりにもあっさりと言うのもだから、源次や健は驚きに固まった。
ちぃ君は知ってたから、涼しい顔で煙草を吸ってる。
「認知してるかられっきとした親父の娘だから、名前なんてなんでもいいんだよ、な?」
私の頭を優しく撫でる。
咲留は欲しい言葉をくれるね。
「うん、名前なんて違っても咲留はお兄ちゃんだもんね」
そう、名前なんかどうでもいい。
咲留が私を妹として可愛がってくれる事実は消えないのだから。
「そりゃ、こんな可愛い妹いたら猫可愛がりしたなるわ」
と源次が言う。
「っか、俺達、昔から知り合いなのに瑠樹ちゃんの存在知らなかったよな?」
健が首を傾げる。
「当たり前だろ?野獣の前になんて晒せねぇ。隠してたに決まってるだろ?」
さも当たり前だと言わんばかりに胸を張る咲留。
「本もんのシスコンやな?」
呆れ顔の源次。
「でも、千景だけは知ってたんだろ?」
拗ねたように頬を膨らませた健は、ちぃ君に恨めしげな視線を向ける。
「そりゃ、俺んちが咲留の家の近くだからな?隠し事とか出来ねぇもん」
ちぃ君の言うように、咲留の家と目と鼻の先にあるちぃ君ち。
彼が遊びに来た事で、私の存在が露見したんだ。
「ちぇっ、千景だけずりぃなぁ」
と言う健に、
「小学生の瑠樹は、今以上に可愛かったぞ?」
良いだろ?なんて煽ってるちぃ君、大人げない。
「うわっ、千景ってショタコンやったん?」
ウゲッて顔をした源次。
「馬鹿じゃねぇの?瑠樹が小6の時、俺は中3だったし。可愛さは万人の物だ」
ちぃ君の言い訳の意味が分からん。
「お前達は誰一人、瑠樹に近づくんじゃねぇ」
横から私に抱きついた咲留は、皆を威嚇する。
危なくて仕方ねぇとか独り言言ってるし。