あの日あの時...あの場所で








「それでは、調度時間となりましたので、この回のソーセージ作りは終了したいと思います」

手作りソーセージを食べ終えた頃、講師の先生の合図で受講していた人達は立ち上がった。



「作ったソーセージも堪能したし満足だね」

「ああ、美味かったな」

豪の口角が上がったのを見て嬉しくなる。


「帰りにお土産に買いたいなぁ」

皆もきっと喜ぶと思うんだよね。


「じゃあ、チルドのやつを買ってきゃいい」

「うん、そうする」

頷いた私の手を引いて歩き出す豪。


ログハウスの外はヤッパリ暑くて。

ムワッとした空気に包まれた。


「暑いね」

これぞ、額に汗かくって感じ。

「さっきまでクーラーの聞いた部屋に居たから余計に暑いな」

顔の前に手を翳して太陽を睨み付ける豪。

確かにこの気温差は厳しい。


「夏って感じだよね」

太陽の光に照らされて、風にさわさわと揺れる草原は果てしなく続いて見えた。


暑さで家畜達も、ちょいグッタリしてるしね。


影がないので大変だよね。



「次はどこへ行くんだ?」

私を見下ろした。


「う...ん、乳絞りしたい」

指差す先は牛舎。


「マジでやんのか?」

.....すっごい嫌な顔された。


さすがに乳絞りは一緒にはやらないよね?



「あ、私だけやるから豪は見ててよ」

と言ったら、ホッとした顔になった。


そんなに嫌なのね。



「牛、結構可愛いのに」

「いや、可愛さが分かんねぇ。あいつらかなりでかいんだぞ?しかも、ベロンとか舐められたりしたら....無理だ」

と顔を強張らせた豪は本気で牛を怖がってる。


百戦錬磨の狼王にも苦手な物はあるみたいだ。


ちょっと可愛いんですけど。


「仕方無いから離れてても良いよ?」

私は鬼じゃないし。


「ああ、そうする」

素直に頷いた豪。


牛が駄目なら、馬もダメなのかの?

豪を見上げてふっと思った。


「馬のダメ?」

と聞いたら、

「いや、馬は問題ねぇ」

と言われた。


馬が良くて牛が駄目なのは、どんな理由なんだろうか?










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