あの日あの時...あの場所で
「うん、そうする。笑う門には福来るだもんね」
エヘヘと笑って首を傾けて豪を見上げた。
「婆さんか?」
そんな呆れた顔しないでよ。
「違うし」
プッと頬を膨らましたら、
「拗ねてんな」
と指で頬をつつかれた。
「私がお婆ちゃんなら、豪だってお爺ちゃんだし」
「ば~か、冗談を真に受けてんな。ほら、さっさと帰るぞ。さっきから、咲留さんからの着信が煩せぇし」
苦い顔でスマホをしまってるパンツのポケットをポンと叩いた豪。
そう言えば、私のスマホもブーッブーッと着信してる。
鳴ると面倒だからって、豪と二人で牧場に来る時にバイブに設定したんだよね。
クマのヌイグルミを片手で抱っこして、鞄を探ってスマホを取り出してみれば、スマホの画面には着信を知らせるアイコンが。
タップしてみると、咲留から10件近くの着信。
「豪の所も?」
画面を見ながら豪に聞いたら、
「ああ、たぶんな。うぜぇ」
と顔を顔を歪めた。
咲留ってば何してるのよ?
今日は豪と出掛けるって知ってるくせに。
ほんと、シスコン咲留は困った人だよ。
って言うか、咲留に憧れてた豪は今や、咲留をウザいと言ってのける辺りが面白い。
私と一緒に居るようになって、シスコン咲留の凄さを知るうちにウザさを知ったらしい。
人間とは面白いものだ。
「ここまで迎えに来ないうちに、帰ろっか?」
苦笑いした。
「ああ、あの人ならやりかねないしな」
クツリと豪も笑う。
私達は少しだけ急いで迎えの車に向かった。