あの日あの時...あの場所で
流れた噂
牧場に行ったあの日から数日が経った。
夏休み真っ只中である。
そうそう、あの日、マンションまで送り届けて貰った私は驚く事になった。
咲留ぐらいは待ってるだろうとは思ってたけど、私の予想を遥かに上回っていたんだ。
豪の車で帰った私を待っていたのは、咲留だけじゃ無かったの。
マンション前に屯してた柄の悪い連中はなんと、源治、ちぃ君、健、そして咲留。
ほんとにさ、近所迷惑考えて!って感じだった。
流石の豪も豪華メンバーの集結を見て苦笑いするしかなかったみたい。
彼らは暇人過ぎる。
黄色い悲鳴を上げるギャラリーが集まってた事に辟易した。
どうせなら、部屋で待っててほしかった。
咲留には合鍵を渡してあるしね。
だけど『家主が居ないのに勝手に上がり込めない』だなんて、まともな事を言われてしまったら、それ以上なにも言えなかったんだけど。
ちょうど良いので、皆に買ってきたお土産を手渡して、体よく追い返した。
だって、牧場で遊んで疲れた体で彼らの相手は無理だった。
ま、咲留だけは、残ったんだけどね。
そこはほら、お兄ちゃん特権を使われた。
ま、そんな感じで牧場に行った日は終わりを遂げたんだ。
「さぁて、行くとしますか」
ベッドから立ち上がる。
牧場で豪に買って貰った大きなクマのヌイグルミの頭をポンポンとする。
この子はあの日から、私のベッドの友となった。
大きくて抱き心地抜群なんだよね。
因みに名前は茶々丸。
もちろん、茶色い彼のフォルムからつけましたよ。
単純!とか言わないでね。
結構、気に入った名前なんだから。
前日から用意しておいた洋服に着替える。
今日はパパとデートの約束をしてるんだ。
やっと、休みが取れたから出掛けようと昨日の夜に電話が来た。
普段、社長業で忙しいパパは休みがほぼない状態らしい。
着替えを済ませて、軽く化粧すれば私の準備が出来上がる。
鞄を手に自室を出た。
良いタイミングでインターフォンが鳴る。
リビングを横切って、ドアフォンのボタンを押した。
「おはよう、瑠樹ちゃん。パパですよぉ」
ああ...咲留と同じテンションだ。
ふっ...と小さく息を吐く。
「おはよう、パパ。直ぐに降りるね」
そう言って終了のボタンを押した。
さて、今度こそ本気で行きますか。
キッチンカウンターに起きっぱなしていたスマホを鞄に放り込んで部屋を出た。