あの日あの時...あの場所で
「なっ、何よ!意味分かんない。もういいわよ」
憤慨して立ち上がった女は、テーブルの上に置いてあった自分のバッグを引ったくるように取ると、ズカズカとドアへ向かって歩き出した。
貴女にはきっと一生分からないよ。
ドアの向こうに消えていく背中を見つめていた。
バタンと大きな音を立てて閉まるドア。
流れるのは微妙な空気。
「千景、女遊びもえぇけど、ここへ連れてくるんは止めてや。あんな女かなわんし」
源次の低い声に、
「りょうか~い」
とヘラりと笑って返事するちぃ君。
軽いのよ。
本当に分かってんのかね?
「あいつの連れも面倒だったし、マジで止めろよ」
咲留が疲れた顔で言う。
ああ、さっきの子に迫られてたのね。
倉庫の外であったケバケバしい女を思い出す。
「分かったって。だって、これからは瑠樹がここに出入りするだろ?女なんて連れて来ねぇよ」
私を見るな。
っか、出入りするとか決まってないし。
「ならいいけどよ。瑠樹の身に危険が迫るから瑠樹以外の女は出入り禁止だからな」
と言った咲留に、
「いや、私も出入りないし」
と告げる。
勝手に決められても困る。
「あ、無理。もう決まってるし」
あっけらかんと言い放つのは止めて欲しい。
「そうやで。もう決定や」
いや、だから、源次まで何を言い出すの?
「今日から楽しくなるな」
ワクワクした顔するな健。
「瑠樹、一緒に遊ぼうな」
ニヘラと笑ったちぃ君、うん、美しいです。
何を言っても現状は変わらないらしい。
まぁ、こっちに友達も居ないし、暇潰しに付き合ってあげてもいいけどさ。
「毎日一緒に居られるな」
そんな嬉しそうな顔されても。
「咲留も大学で忙がしいんじゃないの?」
毎日遊ぶとか無理でしょ。
「その点は心配ない。三年ぶりの瑠樹を優先させる」
「.....」
いや、だから自信満々に言われても。
「シスコン咲留がおらんでも、俺達と遊べばえぇし、なんの心配もあらへんよ」
色々と心配だよ、源次。