あの日あの時...あの場所で
新しい生活
「咲留、もう起きて」
客間のベッドで眠る咲留を揺さぶる。
「ん...あ、あぁ..朝か?」
眠気眼でこちらを見た。
「朝御飯出来てるから来てね」
「ん...分かった」
目を擦りながら上半身を起こした咲留を確認して客間を出た。
キッチンに戻ると野菜を盛り付ける。
冷蔵庫を開けて、100%のオレンジジュースを取り出した。
冷蔵庫の中身は充実してる。
なぜかと言うと、咲留が買い込んで来たから。
昨日、咲留達の溜まり場を後にして、マンションへとやって来た。
管理人に名前を告げれば部屋の鍵を貰える手筈になっていたので、スムーズに新しい部屋へと入れた。
咲留にも手伝って貰って荷物をある程度片付けることが出来た。
夕飯を買い出しに行ってくると出ていった咲留は、食料品と何日泊まるつもり?と聞きたくなるほどの大きさのバッグを手に帰ってきた。
本気でさ、驚いた。
ま、咲留なら有り得るんだけどね。
何日泊まるつもりでいるのやら...。
あえて聞いてない。
久しぶりの日本、少し一人は寂しいと思っていたから。
「うわっ、上手そうな匂いする」
気だるそうに髪をかき揚げながら、部屋から出てきた咲留は鼻をひくひくさせた。
「早く顔を洗っておいでよ」
キッチンカウンター越しに声をかける。
「おう」
軽く手を上げた咲留はレストルームへ消えていく。