あの日あの時...あの場所で
「なら良いけど。一人であんまり彷徨くなよ?あぶねぇし」
「うん、スーパーは道沿いにあるし、それ以外の買い物はパパの車を使うようにと、運転手さんの電話番号も聞いてるから大丈夫」
「どっかに行きたいときは兄ちゃんにも言えよ?どこでも連れてく」
「うん、ありがとうね」
咲留達とは昨日番号とメアドを交換したもんね。
「瑠樹は可愛いから兄ちゃん、心配過ぎて胃に穴が空きそうだ」
と言うわりには、モグモグと朝御飯を沢山食べてるけどね?
「いざとなったら戦うし」
護身術は身に付けてるからね。
多少は戦えます。
「危なくなったら、直ぐに連絡だぞ」
と念を押され、これ何回目だっけ?とか考える。
本当に咲留は過保護で心配性だ。
「分かった。ほら、早く食べよ。学校遅れちゃう」
転校早々遅刻とか嫌だ。
それでなくても三年生のこの時期に転校なんてめだつのに。
「あ、そうだな。早く食お」
急いで食べたし咲留は、やっぱり単純だ。
朝食を食べ終えた私達は、出掛ける準備をして家を出た。
7月の暑い日差しに照らされて、湯だってしまいそうだった。
日焼けは嫌なので、白いレースの付いた黒い日傘を射して歩く。
「暑いなぁ」
眩しそうに朝日を睨み付けた咲留。
「夏だもんね」
と頷いた。
学校に近付けば、生徒達もちらほらと見え始め、こちらを妖しげに見てる子も増えてきた。
高い身長でイケメンの咲留は注目の的、もちろん日傘なんて射してる私も珍しいらしくて見られてる。
興味本意の視線なんて慣れてるからいいけどさ。
あんまりにも、見すぎじゃない?
こちらを見ては怯えたように視線を逸らす男の子が増えてきて、何事か?と咲留を見上げたら...睨んでた。
こっちを見てくる男の子を次々と、視線だけで殺しそうな程鋭いし。
「何してんの?」
と聞けば、
「嫌らしい目で瑠樹を見て来やがるから威嚇してる」
と平然と言う。
学校へ通う学生を威嚇してどうするよ!