あの日あの時...あの場所で
揺れ動く気持ちは、私を麻痺させていく。
触れられた温もりが消えない。
柊との思い出が少しずつ漏れ出してくる。
あの公園にいつも二人で居た。
手を繋いで、抱き締めあって、同じ時を過ごした。
寂しい時、いつも側に居た。
あの頃、私の心の支えは柊だった。
きっと、柊の心の支えも。
だけど、全てが狂いだした。
子供の私達にはどうする事も出来なくて。
私は柊を置いておばあ様の元へ。
そして、柊はそんな私をみかぎった。
仕方がない事だと何度も自分に言い聞かせた。
だって、私は柊じゃなくておばあ様を選んでしまったんだもん。
柊が私から離れるのも仕方ない事。
側にある優しさに彼がすがったのならば、私は何も言えない。
それに、柊は随分と変わってしまった。
柊の噂は決して良いものじゃ無いけど、私にはなにかを言う資格もない。
女遊びの激しいキングは、冷酷な男だと言われてる。
私の知る柊はそんなんじゃない。
優しくて温かくて。
もう、そんなもの幻想なのかも知れないけど。
私に触れた温もりは昔と何も変わりはなかった。
胸の奥が苦しい。
関わっちゃいけないと思うのに、柊の残していった言葉が気にかかって仕方ないんだ。
どうして私を欲しがるの?
貴方にとって、私はもう必要ない存在なんでしょ?
なのに、どうして。
『またな、瑠樹』
柊と再び会う事になるんだろうか?
そして、彼の言いかけた言葉を私は聞かなくてはいけないんだろうか。
知りたい、知りたくない。
怖くて仕方ないんだ。
柊の話そうとしていた事を知るのが。
昔の事を知ってどうしろと言うんだろうか?
柊には本命の彼女が居ると言うのに。
以前に会った女の子だろうか?
あの派手な彼女は柊にベッタリもくっついていたし。
ツキンと胸の奥で音が鳴る。
私はそれに気付かない振りをする。
胸の奥に秘めた思いに気づいちゃダメなんだ。
柊が近付いてくる理由だけでも知ることは出来ないだろうか?
そうすればこんなに悩まなくて済むかも知れない。
悩みすぎた私はあらぬ方向へ考えを向けてしまっていた。
この時、バカなことだと気付いていたら、圭吾になんて連絡を取らなかったと思う。
私は自ら運命の歯車に身を投じて行くことになるんだ。