あの日あの時...あの場所で
過去の話
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迎えに来た瑠樹はどこか様子が変だった。
何も無かった様に振る舞ってるけど、瑠樹の作り笑いが無理してるのを教えてくれる。
本人は上手く誤魔化せてるつもだろうけどな?
原因は咲留さんから聞いていた。
西のキングが瑠樹を抱き締めていたと聞いて、頭に血が上った。
あいつには瑠樹に触れる資格なんてねぇ。
瑠樹に一番近い男は俺だけで良いんだ。
誰にも触れさせたくないし、誰にも傷つけさせたくない。
瑠樹を守りてぇ。
夜叉の巣窟へ向かう車の車内、後部座席に座る俺の隣に腰かける瑠樹は、物憂げに窓の外を眺めてる。
キングの事を考えてんか?
あんな奴の事を考えんな!って言いてぇけど。
今の俺にはそんな資格ねぇもんな。
彼氏でもなけりゃ恋人でもない。
ただの瑠樹の護衛に過ぎない。
咲留さんに頼まれて南の狼王として、瑠樹を守ってる。
最初の頃は頼まれたから、でも今は自分の意思で守ってる。
瑠樹に惚れて、瑠樹を思ってる。
だけど、そんなに簡単には思いを伝えらんなくて。
あいつの中に...キングが居座ってやがる気がして。
胸くそ悪いが思い違いじゃねぇと思う。
いや、キングが居座ってるとかどうかじゃねぇか?
俺が踏み込む勇気がねぇだけ。
情けねぇ話、女に惚れたのはこれが初めてでどうしていいのか戸惑ってる。
もちろん、まったく女を知らねぇ訳じゃねぇ。
互いに割り切った関係で2人ほどとそう言う事はした。
俺も男だしな。
中学に上がったばっかりの頃、そう言う方面が気になって、先輩に誘われるままにヤった。
女からすりゃ気持ちもねぇのにそう言う行為をするのは許されねぇことだろうけど。
ま、男ってのは馬鹿な生き物なんだよな。
数回経験して、その行為にあまり意味を見出だせなかった俺はそれ以来女は抱いてねぇ。
だからと言って、男が好きな訳でもねぇぞ?
ちゃんと女が好きだし。
瑠樹が欲しくて堪らねぇと思う。
だからこそ、気持ちを伝えることを躊躇する。
俺が気持ちを伝えて踏み込んじまう事で、今の関係が崩れちまうのが怖い。
自惚れじゃねぇけど、今の瑠樹は俺に絶大な信頼を置いてくれてて、俺を頼ってくれてる。
そんな生温い関係が崩れるのが嫌だと思うんだ。