あの日あの時...あの場所で
一人の男として認識されてないのは、なにげに凹むけど。
だからこそ、瑠樹に触れることが出来てるのも間違いなくて。
下心があると知れた途端に、瑠樹を抱き締めらんなくなるのは辛い。
小さい男だと笑われるだろうけど。
俺は今の位置関係を壊すのが怖い。
無条件に瑠樹を抱き締められる今が、とても大切だから。
窓の外を切なそうに見つめたままの瑠樹に胸がチクンと痛んだ。
お前の中には、やっぱりキングが居るのか?
「瑠樹、疲れてるのか?」
瑠樹の後頭部を優しく撫でた。
「あ...うん。昼間のお出掛けで少し疲れたかな?」
振り返った瑠樹は眉を下げてそう言った。
「そうか。帰るか?」
そんな辛そうな顔されたら苦しい。
「ううん。心配かけてごめんね?大丈夫だよ」
いつもの様に笑ってくれるけど、やっぱ何処かおかしい。
「ならいいけど。式の途中でもしんどくなったら言えよ?」
お前に無理なんてさせたくねぇしな。
「ん、ありがと、豪」
「ああ」
瑠樹の頭を撫でる。
この愛らしい微笑みが全てを俺のモノだったらと欲が湧く。
抱き締めて俺だけを見ろと叫びたくなる。
だけど、無理矢理手に入れても仕方ねぇ事ぐらい分かってる。
瑠樹の全てが欲しいから。
心も体も視線も全部が欲しい。
焦らずにゆっくりと俺の手中に収めていく。
どんな理由で近付いてるのか知らねぇが、西のキングになんて渡せるかよ。
瑠樹から手を引いたのはアイツなんだし。
あいつの汚れた手を瑠樹には伸ばさせやしねぇ。
俺は決意する。
瑠樹を守ると。
豪side.end
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