あの日あの時...あの場所で
「咲留の馬鹿、そんなことしたら余計にめだつでしょうが。ほら行くわよ」
咲留の腕を掴んで足早に進む。
「あ、ちょ、ゆっくり歩かねぇとこけるぞ?」
「いいから、早く」
誰のせいで早足になったと思ってんのよ。
ズンズンと歩いていくと、学校の塀が見えてきた。
白い塀で囲まれた王凜学園、そこが今日から私が通う高校。
学力の高さでも悪名でも、有名な高校だ。
悪名が高いのに学力が高いだなんて、不釣り合いだけど特進クラスが学力を引き上げてるみたいだ。
私の通うのは特進クラス。
有名大学へと進学率が高いらしい。
ま、そんなことはどうでも良いけどね。
校門の近くに来て気付く、人だかりが出来てることを。
何あれ?
主に女の子がキャーキャーと黄色い悲鳴を上げてる。
「なんだこれ?」
咲留もその集団を見て怪訝そうに眉を寄せる。
「有名人でもいるのかな?」
我先にと、中央に居る人物を見ようとする集団に目を向ける。
そんな場所に溜まられてると通れないんてすけど?
「どけよ」
咲留も同じ様に邪魔だと思ったようで、邪魔な集団に向かって低い声で唸った。
「す、すいません」
怯えた様に、道を開けていく人達。
だけど、咲留の顔を見て驚いた顔をする。
「に、二階堂さんよ」
「いやぁ~全員勢揃いなの?」
「カッコいい~」
なになに?なんのことよ。
咲留ってば有名人じゃん。
「うぜぇ」
咲留は心底嫌そうな顔をすると、私の抱き上げた。
「ちょ、やめてよ」
なぜ、縦抱きにした?
上がる黄色い悲鳴。
煩いんですけど。
そんな女の子達を無視して咲留は校舎へと向かって歩き出す。