あの日あの時...あの場所で










「瑠樹、用意できたか?」

そう聞くのは、三時前にマンションに来てくれた咲留。


「うん、大丈夫」

返事を返して鞄を手に自室から出た。


「おっ、そのオーバーオール可愛いな」

私の姿を見て目を細めた咲留。


パパがこの前買ってくれた白の総レースのオーバーオールで、腰の辺りを同じレースの紐で緩く結んでる。


着心地も良いし、動きやすくて可愛いので私も気に入ってる。


「ありがと。似合ってる?」

とその場でくるりとターンしてみた。


「おう、似合ってるぞ。可愛すぎて今から西に送ってくのが嫌になる」

真顔でそんなことを言うから、


「あ、今さら変更はないからね」

と焦って釘を刺した。


約束したのにドタキャンとかダメだもんね。



「フッ...心配すんな冗談だ。じゃあ、少し早いけど行くか」

咲留は近づいてくると私の頭を優しく撫でた。


「うん。お願い」

頷いて咲留を見上げた。


さぁ、行こう。

真実を聞く為に...。


もう、こごまで来たら迷わない。


圭吾の知る事実を聞いてしっかりと受け止める。


今みたいな宙ぶらりんなままで居るより、先に進む努力をしたいんだ。







咲留と共に部屋を出た。


マンションの前に横付けされてたのは、見覚えのない車で。

いつもの黒塗りの車じゃないことを不思議に思った。


「これ...って?」

と目の前に止まる赤いランボルギーニを見る。


「俺の車。良いだろ。さぁ、お嬢様とうぞ」

そう言いながら車のロックを外すと助手席のドアを開けてくれた。


「えぇっ!咲留の運転で行くの?」

大丈夫か?

一抹の不安を覚えるのは何故だろうか。



「そっ俺の運転でドライブだ。ほら、早く乗れって」

背中を押された。

否応なしに助手席に乗せられた私。


咲留は私が座席に座ったのを確認すると助手席のドアを閉めて、運転席へと向かった。


本当に大丈夫か...私。

嫌な意味でドキドキしてきたし。


咲留が免許を取ったのは知ってたけど、いつも送迎の車に乗ってたし。


今回は、この車を見るのも初めてなら、咲留の助手席に座ったのも初めてなんだもん。


掌に嫌な汗がじんわりと滲む。








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