あの日あの時...あの場所で
波の音と風の音が混ざり合う空間。
並んで座った私達は暫しの沈黙を保った。
トテラポットに座ったまま投げ出した足をブラブラさせてみた。
なんて切り出して良いのか分かんない。
聞きたいくせに怖いから。
たぶん、圭吾だって何から話せば良いのかを迷ってるんだと思う。
柊と私の過去に関するものだもんね。
「...あんまり遅くなるのはダメだから話を進めようと思うんだけど。話しても大丈夫?」
圭吾が私の顔を伺うように見た。
「...うん、聞かせて欲しい」
その為に来たんだもん。
膝の上に乗せた両手をギュッと握り締める。
「...本当はさ、俺なんかが口を出しちゃダメなんだと思うんだけど。無気力なキングをもう見てらんないんだ」
地平線へと視線を向けたままそう言った圭吾の横顔は、とても辛そうで。
「...うん」
「だから、余計なお節介だとは思ったんだけど、瑠樹ちゃんに知ってもらいたいと思ったんだけだ。キングがどんな思いで君から離れたのかを...」
私の方を見て優しく微笑んだ圭吾は、勝手でごめんねと謝った。
「...ううん。私も知りたかったから..理由も分からずに苦しんできたから。だからね?教えて、圭吾君が知ってることを」
だから真実を知らなきゃいけない。
「了解。俺がキングに聞いた話を教えるよ」
そう言って、圭吾はゆっくりと話し始めた。
私が知りたくて知りたくて仕方なかった話を。
圭吾の声以外耳に入らない環境で、私は一字一句聞き逃さないように耳を済ませた。
それは悲しくて、そして優しくて、残酷な話だった。
家族に恵まれなかった柊。
私と同じ様に、いつもあの公園に居た柊。
どうして私は気づいてあげられなかったんだろうか?
柊...柊、ごめんね?
柊も辛かったんだよね?
私だけが辛いと思ってた。
でも、違ったんだよね?
「...柊...ごめん...ごめんね?」
ポロポロと流れ落ちる涙を隠すように両手を顔に当てた。
止まらない涙は、後悔なのか悔しさなのか分からないけど。
涙を流さずにはいられなかったんだ。