あの日あの時...あの場所で
涙で滲んだ視界。
地平線の向こうへと沈んでいく太陽がいつもよりも物悲しく見えた。
結局、なんの真相も知らない私は悲劇のヒロインになってただけだ。
柊の事を何一つ分かってなかった。
柊は私を守るために私を突き放したと言うのに、過去は忘れるなんて軽々しく言って自分が情けない。
「...ごめん...ごめんね?柊」
泣き声は波の音に掻き消される。
柊は今、幸せ?
歯向かえない運命に、翻弄されるのは結局子供だね。
柊は、どんな気持ちで私から離れたの?
どんな気持ちで上加茂組の若頭になったの?
昔の私は何一つ貴方を理解してあげる事なんて出来てなかったけど...。
今の私が柊の為にしてあげられる事はないだろうか。
ねぇ?柊、貴方を昔の様な笑顔にすることは出来ないのかな?
この時の私は柊の事で頭が一杯だった。
バカな私は現実を忘れてた。
簡単に柊に近付いちゃダメだったのにね?