あの日あの時...あの場所で
楓の破壊的な学力を教えられながら向かった実験室。
先生の指示で始まった実験はかなり面白かった。
「う~ん、終わったぁ~」
丸椅子に座ったまま背伸びする楓。
授業終わりのチャイムが鳴って先生が居なくなった途端に騒がしくなった実験室。
豪は来た時と同じ様に私の教科書を持ってくれる。
「楓、のんびり椅子に座ってないで立ちなさいよ」
と叱りつけるのは梅。
「はぁ~い」
と返事する楓を尻目に、私達は歩き出す。
「私達、明日から勉強会するんだけど、良かったら瑠樹も一緒にやらない?」
隣を歩く桃子が聞いてくる。
「あ...えっと」
私は良いんだけど、豪に聞いてみないとね。
無意識に桃子とは反対側を歩く豪を見上げる。
「どこですんだ?」
豪の低い声が桃子に飛ぶ。
「えっと、と、図書室です」
緊張ぎみに答えた桃子。
一緒に行動するようになっても、やっぱり豪は苦手らしい。
「なら、良いぞ。瑠樹」
桃子の返事を聞いた豪は私の頭を優しく撫でた。
「ほんと?」
笑みを浮かべて見上げたら、
「ああ」
と優しく微笑んだ。
友達とテスト勉強なんて初めてで凄くワクワクした気分になる。
「上賀茂君の許可も下りたし楽しくなりそうね。瑠樹の参加で壊滅的な楓もなんとかなりそうよ」
梅はウフフと笑って自分の隣を歩く楓の背中をパシッと叩いた。
「やったぁ、瑠樹ちゃんラブぅ」
両手を伸ばして背後から抱きついて来ようとした楓は、
「歩きながら危ないから抱きつかない」
と梅に首根っこを掴まれて止められた。
「アハハ、本当、楓は単純だよね」
と桃子が笑う。
「楓、スパルタで教えるね?」
振り向いてウインクしてみせた。
やるなら、本格的に教えてあげなきゃね。
やる気を胸に抱いた私に、楓が苦笑いしてたのは間違いない。
この日から始まったテスト勉強会。
豪は私を図書室まで送り届けた後、居る時もあれば居ない時もあった。
友達と集まってする勉強は、脱線しちゃうことも在ったけど凄く楽しかった。
桃子も梅も効率よく勉強できたと喜んでたけど、楓だけは本気でスパルタで教えたので、毎日帰りになるとぐったりとしていたけどね。