あの日あの時...あの場所で
テスト準備も整い、万全の気持ちで挑んだテストは、皆自分の描いてた結果になった。
その中でもかなり飛躍したのは楓。
赤点を脱出しただけじゃなく、順位を中間地点まで上げたらしい。
「これもそれも、瑠樹ちゃんのおかげだよぉ」
私の両手をギュッと握り締めて泣き出しました時には、さすがに驚いた。
「そんなことないよ。楓は基礎さえ出来ればこれからも大丈夫だから、普段の勉強でそこをしっかり勉強すればもっと成績は上がると思うよ」
楓は意識的に勉強が苦手って思い込んでるから、基礎を完璧にマスターすればもっと成績は良くなると思うんだよね。
「うわぁ~ん、瑠樹ちゃん神」
そんな崇められても困るし。
「いやいや、違うから」
苦笑いで顔の前で手を左右に振ってた。
「この子は大袈裟ね」
パシッと楓の後頭部を叩いたのは梅。
「ま、でも、あの成績の楓をここまで引き上げられた瑠樹は凄いと思うよ」
桃子は感心したように微笑んだ。
「それは間違いないわね。楓は壊滅的だったもの」
腕組みしてウンウンと首を縦に振る梅。
「梅、壊滅的とか酷いよぉ」
ブーブーと唇を尖らせて抗議する楓に、本当に壊滅的立ったよと思ったのは秘密だ。
「あ、所でさ。さっき職員室で聞いたんだけど転校生が来るんだって」
思い出したかの様に言い出した桃子の話に一早く食いついたのは、もちろん楓。
「えっ!マジで。男の子?」
ザワザワした教室でもその声は一際目立った。
皆の視線が私達の方に集まる。
「ったく、声デカ過ぎ」
再び後頭部を叩かれた楓は、今度は痛みに頭を押さえた。
「いった~い」
「当たり前、さっきよりも強く殴ったわよ」
と睨む梅は最強だと思う。
ムゥゥ~とか言いながらも楓が大人しくなったからね。
「転校生が来るの?」
と聞いた私に、
「うん、そうみたい。担任が話してたんだよね」
と教えてくれる桃子。
「三年のこの時期に珍しいわね」
確かに梅の言う通りだ。
夏休みを終えた今、卒業後の進学に向けて皆がピリピリし始めたもんね。
「だよね、私もそう思って気になったの」
ウンウンと頷く桃子は怪訝そうに眉を寄せる。
転校生かぁ、この時期に大変だね?
なんて、他人事の様に思ってた。
だけど、この転校生が色々な意味で私達を掻き回す存在になるなんて、この場に居た誰もが思っていなかった。