あの日あの時...あの場所で
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咲留さんと千景に、意図も簡単に瑠樹を連れ去られた。
俺はそれを見送る事しか出来なくて。
何がダメだったんだ?
どうしてこうなったんだ?
瑠樹の側に近寄んなってなんだよ?
他の誰かに瑠樹を守らせるとか冗談じゃねぇ。
俺が守らずに誰があいつを守れるんだよ。
ざわざわと煩い放課後の教室。
俺達のやり取りを見ていたクラスメート達は、何事かと訝しげに眉を寄せて囁き合っている。
チッ...うぜぇ。
見てくんな!
苛立ったまま周囲に睨みを効かせた。
「バカじゃないの?自分の失態にも気付かずにいつまでもそうしてれば良いわ」
そう言って鼻で嘲笑ったのはいつも瑠樹の側に居る橋爪。
冷たく感情のない瞳で俺を睨み付けた後、背を向けて他の二人と共に教室を出ていった。
「...くっそ...何なんだよ」
握り締めた拳。
意味分かんねぇんだよ。
「んもう、豪ったらそんな顔しないで帰ろ」
上目使いに俺を見上げる佐奈。
あぁ、こいつ、まだ腕に抱きついてたのかよ?
瑠樹の事に神経がいってて、佐奈の事はすっかり忘れてた。
「いつまでくっついてんだ。離れろ」
腕を振って佐奈を引き剥がす。
「んもう、良いじゃん。腕組むぐらい」
唇を尖らせて頬を膨らませる仕草は男受けのするそれで。
昔はこいつのこんな表情にドキッとさせられた事もあったと思い出す。
だけど、こんな作りもんじゃねぇ本当の可愛さを知った今は、俺の心はピクリとも反応しねぇ。
瑠樹に会ってなきゃ、佐奈の作り物に気付かなかったかもな?
俺は恋愛に不器用だから。
「...帰る」
机の上に置いてあった鞄を肩にかけて歩き出す。
「あ、待って待って、佐奈も行く」
俺を追い掛けてくる佐奈をふりかえらずに教室を出た。
今、瑠樹を取り返すのは不可能だな...。
咲留さんと千景があんなに起こってた理由は分かんねぇけど、二人があれじゃ俺が何を言っても今は意味ねぇ。
それに...瑠樹にも拒絶されちまったしな。
あれが一番堪える。
あ~もう、どうすりゃ良いんだよ。
マジで意味分からねぇよ。