あの日あの時...あの場所で
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「豪、瑠樹さんは可愛いですね」
兄貴と一緒に帰っていく瑠樹の背中を見送る。
「ああ」
瑠樹は確かに可愛い。
写メを見た時から、心を奪われてたなんて口が避けても言えねぇ。
実際に実物を見て、さらに惹かれた。
俺を見ても媚びねぇし、顔色一つ変えねぇあいつを気に入った。
「だけど、誰もが見惚れる豪をお兄ちゃんレベルにしか見てへんて言うのは、実に面白いわ」
「...チッ..うぜぇ」
大翔の言うことが図星過ぎてムカつく。
あいつ、俺を男として認識したやがらねぇ。
だから、抱っこも違和感なくさせやがる。
ありゃ、咲留さんの影響が大きいな?
「咲留さんに猫可愛がりされてるので、よく似たタイプの豪を受け入れやすかったのでしょうね」
「はぁ...良いのか?悪いのか?分からねぇ」
思わずついた溜め息は本音。
「まぁ、焦らずにいけばいいじゃないですか?咲留さん以外で彼女に一番近い存在なのは豪なのですから」
「確かにそうやな。瑠樹も俺らより豪になついてるしな」
夏樹と大翔の言葉に落ちた気持ちは浮上する。
「瑠樹が欲しい」
女嫌いの俺が欲するだなんてな?
まったく、女を知らねぇ訳じゃねえけど、こんな気持ちは初めてだ。
「焦らずにゆっくりいけば良いんです。彼女の心はまだ成長段階です」
「そうそう、焦って瑠樹に警戒されたら終わりやしな」
「ああ、のんびりいくさ」
あいつを困らせたくはねぇしな。
だけど、こんな俺の心とは裏腹に事態は思わぬ方法へ転がって行くことになるんだ。
その事に気付いてる者なんて居やしなかった。
豪side.end.
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