あの日あの時...あの場所で
楽しみにしてると、時間は遅くなる。
早く明日にならないかな?
なんて、思いながら玄関を開けた。
咲留はまだ帰ってない。
ってか、咲留はあの日から住み着いてる。
そして、過保護に構ってくる。
なので、私は学校でも家でも、過保護な保護者に囲まれてる気分だ。
いい加減、咲留には自分の家に帰ってもらいたい。
こちらでの生活にも慣れたので、咲留には咲留の生活をして欲しいと思う。
キッチンに入って、鞄の中から二人分のお弁当箱を出してシンクに収める。
豪のお弁当も作るのが、毎日の日課になってる。
一つも二つも変わらないので、特に問題はない。
咲留は大学の学食が安くて美味しいので、お弁当は要らないらしい。
大学生ともなると、色々あるんだと思う。
自室に戻って制服から私服に着替えると、ベランダに干しておいた洗濯を取り入れた。
籠へと放り込んだそれをリビングに置いて、再びキッチンへと向かう。
夕飯の準備をしておくのだ。
咲留が帰ってきたら、温かいご飯食べたいだろうしね。
頭で考えたメニューを手早く仕上げていく。
料理は結構好きだ。
出来なさそうな外見に反して、中々やると自分でも思う。
食べてくれた人に、美味しいと言われるのが結構好きだ。
昔.....私の手料理を食べて『温かくて美味しい』と涙を流した彼を...思い出した。
あぁ、封印してたのにな。
豪達と楽しく過ごして忘れた気で居たのに。
私の中には、まだ貴女が居るんだね?
私が初めて恋した彼。
中学生の子供みたいな恋だったけど、あの時の私は精一杯彼が好きだった。
近所に住んでた彼。
同じ小学校の同じクラス。
転校生で浮いてた私に話しかけてくれたのが切っ掛けで、私達は仲良くなった。
見慣れない容姿の私には彼しか友達はいなかった。
いつの間にか、一緒に居るのが当たり前になってた。
あのシスコンな咲留とも、彼は仲良くなった。
一緒に三人で過ごすことだってあった。
私を守る騎士だとある日誰かが言ってたっけ。
愛人の子だと苛められる咲留の家には私の居場所はいつもなくて、彼と公園で過ごした日々。
彼には母親しか居なくて、いつも仕事に出掛けていたので、彼も私と同じ様に一人だった。
二人で寄り添って...二人で支え合ってた。