あの日あの時...あの場所で
あの日.....私が彼の元を去るまでは。
『お前まで俺を置いていくのか』
今でもあの言葉が耳に残ってる。
彼の悲痛な叫び声に、私は答えてあげられなかった。
耳を塞いで、目を瞑って、涙を堪えた。
中学2年生の私には大人の決めた事情に抵抗する力なんて無かったの。
本当は私だって一緒に居たかった。
彼と離れる事なんて望んで無かった。
だけど、私の運命が貴方との中を引き裂いた。
迎えに来たおばあ様に連れられて、私はアメリカへ渡米した。
彼の最後の言葉を思い出す。
『...待ってる』
その言葉がどれ程嬉しかったか。
会えなくても繋がっていけるのだと希望を抱いた。
だけど、やっぱり運命は残酷だった。
メールのやり取りをして過ごした数ヵ月。
次第に返事は滞った。
そして、メールのやり取りは半年を目前に完全に途絶えた。
直ぐ様会えない距離は、心を引き離してしまう。
望みを抱いてかけた電話も、淡々と話す女性の声へと繋がった。
『お客様のおかけになった......』
私は落胆した。
もしかしてと、送った手紙は宛先不明で戻ってきた。
本当に、彼とは終わったのだとその時に確信した。
毎日を泣いて過ごした日々。
たけど、それじゃダメなんだと立ち上がった。
毎日、必死に勉強して有意義に過ごすために努力した。
アメリカの地には、頼れるのはおばあ様しか居なのだから、私を大切にしてくれるおばあ様を喜ばせようと決めたんだ。
彼の事も全て忘れた振りをして。
私は幸せを演じた。
そんなおばあ様も突然亡くなってしまって、皮肉にも日本に帰ってくる事になってしまったけれど。
彼を探すつもりはない。
考えがあって、私から離れたのだろうから。
それに...もう三年近く経ってしまったもの。
私の事なんて忘れてしまってるわ。
彼を知ってる咲留は、何時からか彼の事を言わなくなった。
その事を私も敢えて追求していない。
もう...良いから。
もう...終った事だから。
なのに...どうして、こんなにも胸の奥が苦しいのかな?
どうして、涙が出るのかな?