あの日あの時...あの場所で








あの日.....私が彼の元を去るまでは。



『お前まで俺を置いていくのか』


今でもあの言葉が耳に残ってる。


彼の悲痛な叫び声に、私は答えてあげられなかった。


耳を塞いで、目を瞑って、涙を堪えた。


中学2年生の私には大人の決めた事情に抵抗する力なんて無かったの。


本当は私だって一緒に居たかった。

彼と離れる事なんて望んで無かった。


だけど、私の運命が貴方との中を引き裂いた。



迎えに来たおばあ様に連れられて、私はアメリカへ渡米した。


彼の最後の言葉を思い出す。


『...待ってる』

その言葉がどれ程嬉しかったか。


会えなくても繋がっていけるのだと希望を抱いた。


だけど、やっぱり運命は残酷だった。


メールのやり取りをして過ごした数ヵ月。


次第に返事は滞った。


そして、メールのやり取りは半年を目前に完全に途絶えた。


直ぐ様会えない距離は、心を引き離してしまう。


望みを抱いてかけた電話も、淡々と話す女性の声へと繋がった。


『お客様のおかけになった......』

私は落胆した。


もしかしてと、送った手紙は宛先不明で戻ってきた。


本当に、彼とは終わったのだとその時に確信した。


毎日を泣いて過ごした日々。


たけど、それじゃダメなんだと立ち上がった。
 

毎日、必死に勉強して有意義に過ごすために努力した。


アメリカの地には、頼れるのはおばあ様しか居なのだから、私を大切にしてくれるおばあ様を喜ばせようと決めたんだ。


彼の事も全て忘れた振りをして。


私は幸せを演じた。




そんなおばあ様も突然亡くなってしまって、皮肉にも日本に帰ってくる事になってしまったけれど。


彼を探すつもりはない。


考えがあって、私から離れたのだろうから。


それに...もう三年近く経ってしまったもの。


私の事なんて忘れてしまってるわ。


彼を知ってる咲留は、何時からか彼の事を言わなくなった。


その事を私も敢えて追求していない。



もう...良いから。

もう...終った事だから。


なのに...どうして、こんなにも胸の奥が苦しいのかな?


どうして、涙が出るのかな?












< 66 / 445 >

この作品をシェア

pagetop