愛合傘Ⅰ~終わることで始まる物語~【完】
第五章 ―秋霖―
最も恐れていたこと
「こらー、席つけー。」
影山先生が教室に入ってきたと同時に本鈴がなった。
私は席に座った。
あの日から上手く話せていない。
余計な考え事をしてしまうのだ。
ずっと夕日君の事で頭がいっぱいだった。
私は知らない。夕日君のこと。
私の知らない夕日君の世界―――。
「柴田、次はどの席希望してる?」
「そうですね…。前の席ですかね。」
「そうか。佐藤はどうだ。」
そうだった。今この席もあと何日後に席替えをするんだ。
ただ偶然になっただけだよ。
なんで隣になったのかな…。