ヒミツの王子さま!
……え?
「ミスコン、残念だったね、咲坂さん。見てみたかったんだけどな。男の君が何をするか」
ビクリと固まった、俺と日向。
ギギギって音がしそうなほど、ぎこちなく顔を上げた日向は、不自然なほど頬をひきつらせて笑った。
「でもすごいよね。今までみんなにもバレてないんだから。最初は俺も女の子だと思ってたけど。 確かに綺麗な顔してるもんね」
「……な、何言ってるのー?慧吾くん、女の子口説く時はもっと言葉選ばなくちゃ。いくらナオがかわいいからって、それは褒め言葉にはふさわしくないってば」
乾いた空気の中を、まるで滑るように日向と葉月の声が響く。
俺はうわの空でそれを聞いた。
「……」
視界が一気に狭くなる。
「……、……っ、あ、そ、そうだ。ナオが男の子っぽいってゆーのは学校でも有名な噂だもんね! もう、慧吾くんナオに失礼でしょ? ほら、ナオも何か言って?……ほらほら!」
グイっと腕を引っ張られて、我に返る。
日向を見ると、今にも泣き出しそうなほど不安な顔をしていた。
……また泣く。ほんと、泣き虫だな。
なんて思いながら、俺は顔を上げた。
――バサッ
?
口を開きかけたその時、突然背後で、何かが落ちる音がした。
目を向けると、俺たちと同じように固まる、るみが、いた。
「――……それ、どうゆう、事?」
少し吊り上がった大きな瞳をさらに見開いて、眉間にグッとシワを寄せたるみの声が震えていた。
……オワッタ……。