ヒミツの王子さま!
「バレないといいね。 ま、頑張って!
……それと、今度は俺の邪魔しないでね」
そう言って、葉月はくるりと背を向けると図書室を出て行った。
俺たちの他に誰もいなくなった図書室は、えらく静かで。
耳鳴りがしそうなほどだった。
校庭からかすかに聞こえる声。
その声もしだいに遠くなる。
夜が夕陽を呑み込もうとしているのがわかった。
それでも、まだ動き出せない俺と日向。
そして、本を落っことしたままフリーズしてるるみ。
るみがどんな表情をしてるのか見るのが怖いような、そんな弱気になってる自分がいて。
……くそ!
あのヤロウ、るみがいるのわかってて言いやがったな!
マジでありえねぇ!
「……ねえ、どう言う事か説明してくれるよね」
ギュッと手を握りしめたのとほぼ同じタイミングで、静かにるみが口を開いた。
顔を上げると、真っ直ぐに俺を見据えるるみがいて。
うわー、相当怒ってんな。
こりゃ、まじ退学だわ。
なんて冷静に考えてる。
説明するのも面倒くさくて、小さくため息をついた俺を見て、慌てて前に踏み出した日向。
「あ……あのね! これには訳が……」
「日向には聞いてない! てか、日向は知ってたんだ。ナオが男だって……」
「……ご、ごめん……」