ヒミツの王子さま!
キスはミルキーの味
うーんと両手を伸ばしてゴロンと寝ころぶ。
背中に感じるコンクリートのヒンヤリとした感触が心地いい。
体中に太陽の日差しを浴びて、俺は目を閉じた。
もうすぐ12月に入ろうとしてる。
髪を持ち上げて、制服を揺らす風は少し肌寒い気がするけど、日が射していれば暖かくて、まるで小春日和だ。
眠い……。
これまた心地よい睡魔が俺を襲う。
そっと重たくなった瞼を持ち上げると、のんびりと青い空を泳ぐ羊雲が見えて、まぶしくてまた目を伏せた。
それにしても……
「なーんか拍子抜けなんだよなー」
そうなんだ。
るみと葉月に俺が『男』だってばれちゃってからもう1週間たつ。
なのに、何もない。
すぐに全校生徒に知れ渡ると思っていただけに、俺は拍子抜けしていた。
睡魔と闘いながら、ポツリとこぼした言葉に、のんびりとした声が返ってきた。
「えー、なに?」
……ムカ。
なんかそれだけなのにかんに障るな。
チラリと視線を向けると、そこには俺と同じように寝そべった壱也の姿。
呑気にあくびまでしてやがる……。
「……あーあ! 壱也はいいよなっ。悩みとかなさそうで」
嫌味で言ってやった。
だけど壱也は、目をちょっとだけ開けて、楽しそうに俺を眺めると、またその目を閉じてしまった。
「……」
んだ、コイツ。
余裕ってヤツか!
……ダメだ。
もし俺が成長して、壱也の背を抜いたとしても。
俺は壱也には一生勝てない気がする。
……いろんな意味で。