ヒミツの王子さま!



「壱也」


「……」


「……壱也?」


「……」





カチン!




「だあああっ!だからさっきからなんだっつの!こんの……どけっ」




そう言って壱也の体を無理矢理押しのけた。


それでやっと我に返ったのか、壱也はハッとしたように目を見開いて俺を見つめた。



「……ごめん……」


「……ったく。変なヤツ」



前から変だとは思ってたけど。
今の壱也はもっと変だ。


『ごめん』なんて謝りながら、口元を手で覆った壱也はその後、なんだか納得いかない顔をしていて。



ぼんやりしたまま、その場を去った。




……頭打ったのか?



少し離れた場所に、野球のボールが転がっていた。







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